新刊『中央銀行が終わる日』刊行記念・特別対談その1

公開日時: 2016/03/22 PM3:35 JST

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岩村充氏:早稲田大学大学院商学研究科(4月より経営管理研究科)教授

斉藤賢爾氏:慶応義塾大学SFC研究所上席所員

 

日銀出身の経済学者、ビットコインと中央銀行の役割を考察

 

3月25日、新潮選書『中央銀行が終わる日 ― ビットコインと通貨の未来』が刊行される。著者の岩村充氏は、日本銀行を経て1998年より早稲田大学で教鞭を取る経済学者で、また暗号通貨に関して2014年に論文も発表している稀有な存在だ。

 

本書の中では経済史・通貨史の文脈から仮想通貨ビットコインがもたらした“既存の金融システム”への影響と、そもそもビットコインに使われている暗号技術とはどのようなものかが丁寧に、かつわかりやすく紹介されている。

 

今回は新刊刊行にあたり、慶應義塾大学SFC研究所上席所員の斉藤賢爾氏とお二人で対談していただいた。斉藤氏は日本発のブロックチェーンインフラ基盤であるOrbのチーフ・コンサルタントも務めており、2006年にはネット技術を応用した「新しいお金の創作」をテーマに博士号を取得している。

 

二人の対談は、テーマに分けて今後数回に渡って連載する。

 

マイナス金利に突入した今、「デジタルデータ化された通貨」構想がもたらすものとは

著者の早稲田大学教授・岩村氏

著者の早稲田大学教授・岩村氏

斉藤氏(以下、「斉」):本書のタイトルはかなりインパクトがありますが、デフレ脱却に向けた金融政策「マイナス金利」に戸惑いが広がっている今、貨幣の在り方について再考の時期が来ているのは確かだと思います。

 

岩村氏(以下、「岩」):マイナス金利は市中銀行間の取引における金利をマイナスに寄せるという文脈では一定の金融緩和効果がありますが、どうしても限界があります。今、世界中がかつてケインズが指摘した「流動性の罠」という、金融政策が行きづまった状態に陥っていると言えるでしょう。テクノロジーの進化で貨幣のデジタル化も可能となってきている今、本書ではこうした新しい形のマネーを利用して現状を打破するための案を考えてみました。

 

斉:この話題は今後の対談でさらに深めてゆけたらと思います。これまで経済学史の中でも、貨幣の在り方についてはたびたび議論がありました。ビットコインがインターネットを応用したマネーとして、ピア・トゥー・ピアで中央管理体を持たずに動く姿を世の中に広く見せたことは、時代に則したものといえるかもしれませんね。

ビットコインの基盤技術、ブロックチェーンには本当に将来性があるのか?

慶応大学SFC研究所上席所員・斉藤氏

慶応大学SFC研究所上席所員・斉藤氏

斉:昨年から「フィンテック(Fintech、Finance×Technology)」というワードの流行と共に、世界の大手金融がこぞってブロックチェーン技術の研究や開発に打ち込み始めました。ただしブロックチェーンを「最先端」で、「なんでも解決できる万能技術」と持ち上げるかのような風潮には違和感があります。

 

そもそも暗号通貨に多少知識があれば、ブロックチェーンは最先端の技術でもなく、既存の金融やビジネスの実装が今取り上げられているほどにイ―ジ―ではないことも明白です。仮に決済手段として用いる場合、決済完了時点をどことみなすかという点ひとつ取っても議論が起こるわけです。こうした課題点についてはまた次の対談でご説明したいと思います。

 

ただし、もちろんブロックチェーン技術が可能にするとされていることには大きなポテンシャルがあります。グローバルに稼働できること、データの改ざんが困難なこと、支配権が個人個人に属するようになることといったメリットも多々あります。正しく開発し、活用機会を見極めることが今後の混乱を防ぐと信じています。

ビットコインの出現を経済史と技術面の二方向から整理する

 

岩:ビットコインの仕組みは、マイニングという“利益を純粋に求める人たち”によって支えられています。“利益が欲しい”という目的が単純なマイナー達は典型的な「経済人」であり、そうである限り逆に彼らの行動は信頼ができる。このようにシンプルな構造がブロックチェーンとうまく作用したと言えます。

 

斉:本書ではビットコインを支えるブロックチェーン技術の仕組みや、マイニング、マイナーとは何かについてとてもわかりやすく解説されていますね。ビットコインの技術面は込み入っているので、今ビットコインを利用している方やすでに色々と知識がある方でも実は認識の仕方を誤っていたり、知らない部分があったりするかと思います。ビットコインを経済史と技術面からどう捉えるか、思考の整理にもなる一冊だと感じました。

 

(続く)

 

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