MicrosoftのMarley Gray氏 :サービスとしてのブロックチェーンの可能性

公開日時: 2016/08/10 PM3:30 JST

interview

7月末に来日したMicrosoftのシニア・ディレクターであるMarley Gray氏に、サービスとしてのブロックチェーン、BaaS(Blockchain as a Service)の可能性についてうかがった。

 

昨年11月、MicrosoftはオープンクラウドのサービスであるMicrosft AzureにブロックチェーンのプラットフォームBaaSをローンチした。4月にはプロックチェーンのコンソーシアムであるR3にBaaSがプリファード環境として選定されている。

 

Azureはオープンクラウドなのでマイクロソフトだけでなくどの環境でもオープンプラットフォームを組むことができる。利用するブロックチェーンもEthereumやrippleなど複数から選択でき、ゆくゆくはさらなる拡充をねらう。

 

こうした流れの中で、Gray氏はAzureを土台とするエンタ―プライズ向けのブロックチェーンのアーキテクチャ構想、Bletchleyプロジェクトについて語った。

 

Bletchleyプロジェクトとは、Azure環境をベースとしてユーザー、特にエンタープライズにブロックチェーン・ツールを簡単に利用してもらうためのマーケットプレイスをニーズに沿って提供しようという構想だ。

 

 

Azure環境にEthereumなどを利用したスマートコントラクト環境やHyperledger ProfectのブロックチェーンFabricなどを利用したベースプラットフォームをつくり、ミドルウェア層としてユーザーが追加のトランザクション情報を必要とする場合のサービスとしてCrypletsを提供する。このCrypletアーキテクチャの元、ブロックチェーンのゲートウェイサービス、アイデンティティとキー管理のサービス、プライバシーサービス、ML(機械学習)とBI(企業の蓄積する大量なデータ)などのサービス要素を金融サービス、ヘルスケア、リテイル、メディアから公共機関までを視野に入れた各業界へソリューションとして提供するというものだ。オープン型、コンソーシアム型、プライベート型のそれぞれに対応できるものを目指す。

 

「例えば、ヘルスケアに提供するプライバシーサービスを例にとってみましょう。現状では医療機関にかかると、その特定の医療機関もしくは医師との間にのみ診療データが共有されます。別の医療機関などにかかる場合はその都度以前の診療データをもらう必要があります。しかし、BaaSを利用することでその診療データの所有権を自分で持つことができます。以前のデータに別の医師を簡単に招いたり、または元々の医師のアクセス権を取ってしまうことも可能です。」

 

診療データにはさらなる可能性もある。もしも自分の診療データを匿名などの条件でオープンにしようというボランティアがたくさん出たとする。ここで、CrypletsによるHPC(High Performance Computing、高度な計算処理)からゲノム比較などができるようになれば、医療の進展にも役立てることができる。

 

例えば金融取引の場合、スワップのポジションはお互いに見られたくないだろう。そこでデータを暗号化して、お互いに取引状況は見えるがポジションまでは許可した範囲までしか共有できないようにするといったサービスも実現する。

 

また、Crypletsはセキュアな方法で日付や時間、レートなどの条件をスマートコントラクトに提供することにも対応する。従来ではOracleと呼ばれるこうした“スマートコントラクトを起こすために与えられる外部情報”については、これをスマートコントラクトに取り込む際にプロトコルやホストがセキュアかどうかをどう確かめるのかといった課題があったが、Crypletsの場合はこうした情報のシグネチャーのチェック、トランザクションへのサインなどを提供することでセキュリティ面の向上を図るというもの。

 

 

さらに、こうして外部の情報を取り込めるようにリクエストしたコントラクトのコードを各々のノードが実行するとデータが重くなってスケールしないというボトルネックが生まれるかもしれないので、Azure上でコントラクトを作成して1つないしは選択したふくすのノードがこうしたコードを持つことで、セキュリティとパフォーマンスのバランスを取りながらスケーリングに対応しようという構想もあるようだ。

 

最後にGray氏は、Microsoftがブロックチェーンを提供するアドバンテージについて、参加人数が多くなる、シェアが多くなることが期待できるという点を挙げた。普及の規模が拡大すれば、ブロックチェーンの応用範囲も広がる可能性がある。

 

ミドルウェア層のひとつの例として挙げられているキー管理の文脈で、Microsoftはブロックチェーン企業のBlock Labsと、EthereumのConsenSysが提供するuPortというIDソリューションと提携し、将来的にさまざまなブロックチェーンや分散型システムに対応できるような、クロスチェーンの身分証明ソリューションを作成しようと考えている。今、世界の人口の5分の1ほどにあたる人々が正式な身分証明を持たず、こうした身分証を持たない人は公的サービスを受けることができない、人身売買などの被害者になってしまうといった可能性が非常に高くなるという問題がある。こうした問題にブロックチェーンのソリューションを大規模で提供できるようにならないかという試みだ。

 

「MicrosoftはHyperledgerなどのプロジェクトをエンタ―プライズも開発に利用できるような環境を提供することに今後も力をいれていきたい」とGray氏はまとめた。