インタビュー:ConsenSysが語るThe DAO事件とハードフォーク

公開日時: 2016/08/14 AM8:30 JST

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今回コインポータル編集部は最近話題になったThe DAO事件とイーサリアムハードフォークについてニューヨークを拠点にイ―サリアム関連のプロジェクトに取り組む企業ConsenSysの方にお話を伺った。

 

インタビューに答えて下さったのは事業開発部門を統括するAndrew Keys氏とエンタープライズソリューション部門のJohn Lilic氏だ。

 

・The DAOというプロジェクトとDAOという概念

 

この一件でダオ(DAO)という言葉の知名度が格段に上がったが、DAOとthe DAOは全くの別物だということを最初に押さえておきたい。「DAO」とはDecentralized Autonomous Organization、つまり一般的な分散型自律組織を指す言葉だ。

 

今回事件の渦中にあるのはTheがついている方の「The DAO」で、ドイツのスタートアップであるSlock.it社がサイド・プロジェクトとしてスタートした分散型の事業投資ファンドを指している。

 

・今回の事件はイーサリアム自体に問題があったわけではない

 

今回の事件はSlock.itがイーサリアムのプラットフォームを利用して分散型投資ファンドを作ったものの、集めた資金がコードの脆弱性を突かれて盗まれてしまったというものだ。事件の解決のためにプラットフォームであるイーサリアムがハードフォークを行う形となったが、問題があったのはThe DAOのコードでありイーサリアムではない。また、フォーク後もイーサリアムは正常に稼働している。

 

事件の詳細は以下の記事をご参照頂きたい

The DAOのイーサ流出事件 と与えられた選択肢

イーサリアムがハードフォークへ

 

ハードフォークとThe DAO事件から学んだことは

 

編集部(以下、編):今回ハードフォークを行うというEthereumの決断についてはどのように考えていらっしゃいますか?

 

Andrew Keys氏 (以下、A):まず状況を簡単に説明すると、ハードフォークにはアップグレードのために行われるものと、過去に起きた大きな問題を解決するために行われるものの2種類があります。

 

ビットコインも過去に何度かハードフォークが行われており、イーサリアムのハードフォークも今回が初めてではありません。2016年の3月にはイーサリアムの最初のバージョンであるFrontierからHomesteadにアップグレードするためのハードフォークが行われました。なので、ハードフォーク自体は恐れるべきことではありません。

 

今回のハードフォークの理由は後者でイーサリアムがまだβ版であった上にThe DAOに集まった資金や流出額が巨額であったため、「無視できない事態」となったためでした。ですが、このような事件は2度とあってはいけませんし、技術が成熟するとこのようなハードフォークはできなくなります。

 

ConsenSysのAndrew Keys氏

 

TheDAOを繰り返さないための対策は?

 

A:今後は、集める資金に「10億円まで」といったような上限が設けられ、IT セキュリティ監査(IT Security Audit) がさらに重要な役割を果たすことになるでしょう。

 

編:IT セキュリティ監査についてもう少し詳しく説明していただけますか?

 

John Lilic氏 (以下、J):例えばもし日本を代表するようなメーカーや代理店がスマートコントラクトを使ってサービスや製品を作りたいと考えた時に、ITセキュリティ監査の企業に依頼をしてスマートコントラクトがうまく作動するかどうか、コードに問題がないかをチェックしてもうらうようなイメージです。

 

A:全く新しいビジネスなので、新しい企業やビジネスがここから生まれ、とてもホットな領域になると思います。

 

編:ConsenSysもこのようなビジネスを行う予定はあるのですか?

 

A:そうです。少なくとも、イーサリアムがそのプラットフォーム上に作られたアプリケーションの事故の後始末をするという事態は避けなければなりません。

 

今回はハードフォークが次善の策だったが、2度と繰り返すべきではない

 

ConsenSysのJohn Lilic氏

 

編:今回のハードフォークはベストな判断だったと思われますか?

 

A: イーサリアムのネットワーク全体にとって次善の策だったと思います。ハードフォークを行わなければ、イーサリアムファウンデーションにはβ版の段階であるにも関わらず非常にネガティブな影響を与えてしまいます。

 

J: そもそもα版やβ版がある理由は、テストを行い正式なリリースをする前に問題を見つけて解決することです。

 

A:既に過ぎたことではありますが、あんなに巨額の資金を集めるべきではありませんでした。今回の事例から学び、今後は資金の額を制限し、セキュリティのレベルの高い状態でプロジェクトが行われることになります。

 

編:コミュニティの中には不変であること(immutability)に価値があると考えており、何があってもハードフォークをして事件を帳消しにするべきではないと考える人もいるようですが、それについてはどう思われますか?

 

A:理論上は不変であるべきだというコンセプトには同意できます、ですがイーサリアムはまだできたばかりの「赤ちゃん」です。初期の段階にこれほど大きな問題が起きたら手を打つ必要があると思います。今後2018年の1月にイーサリアムのスケ―ラビリティとプライバシーのロードマップが完了する予定なので、その後はシステムをアップグレードするためのハードフォークはあるかも知れませんが、過去の記録を帳消しにするようなハードフォークは行われません。

 

ConsenSysで行うプロジェクトでもあまり沢山のお金を集めないよう注意しており、例え資金調達の上限が約10億円と決められていたとしてもそこまで大きな額を扱わないつもりですし、セキュリティのためのチェックも何度も行っています。

 

編:最後に、今回の出来事でイーサリアムが得た教訓は何だったと思いますか?

 

J:非常に沢山の教訓がありましたが、一つにはセキュリティの理解が挙げられます。セキュリティ上の問題を理解し、解決するためにインターネット上で様々な議論やコードの共有が行われイーサリアムのエコシステムという観点でこれまでよりも強くなったのは良かったと思います。また、あのようなプロジェクトを行う際は責任を持つ義務があると思います。

 

これまでの1カ月はイーサリアムに関わる人たちみんながThe DAO事件の解決に取り組んできましたが、ハードフォークも完了しこの事件は終わりました。ここからはTheDAOについての議論ではなく前向にイーサリアムが社会にどのような価値を提供できるかについて語られるよう期待したいです。