ハッキングされない取引所!? Bitsquare

公開日時: 2016/11/27 AM8:30 JST

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世界各地の取引所ではハッキングや内部関係者の横領などによる事件が後を絶たないが、このリスクが極めて低い分散型の取引所が存在する。

 

分散型取引所プロジェクト「Bitsquare」のファウンダーであるマンフレッド・カレール氏は2011年にビットコインについて知り、世界の多くのビットコイナーのようにその可能性に驚愕した。その後2013年には自らもマウントゴックスで一部のビットコインを失ったこともあり、それまでやっていた金融機関でのソフトウェア開発業務をやめ、たった一人で開発を始めた。

 

2015年1月から20日間のクラウドファンディングを行ったがわずか54BTCの資金しか集まらず失敗。
技術的課題もありもう辞めてしまおうと思ったが、手もちのEthereumとMoneroが高騰したことと、一部の支援者、開発者に後押しされ継続することを決意、今年の4月にサービス開始された。

 

今回は現在バルセロナでこのプロジェクトの広報、事業開発を担当している日本人の宍戸健氏にお話を伺った。

 

分散型の取引所ってどういうこと?

 

分散型の取引所とはどういうことなのだろうか。通常ビットコイン等の仮想通貨を取り扱う取引所・販売所は運営母体となる企業が売り手と買い手のマッチングのプラットフォームを提供したり、ユーザーとビットコインを売買している。

 

しかし、分散型取引所の場合は中央でユーザーを管理する運営主体を持たずにピア・トゥー・ピアのアプリケ―ション上で売りたい人と買いたい人をマッチングさせている。

 

 

Bitsquareはウォレットが内蔵されたデスクトップ取引アプリだ。アプリを起動し例えば1ビットコイン売りたいとオ―ダ―を出せば、ビットコインを買いたい人とのマッチングが行われ、その際ユーザーは取引するビットコインに加えて少量の手数料を支払ってやりとりするイメージだ。

 

宍戸氏は「ビットコインの世界には分散型という言葉が溢れているが、実際に完全に分散型のものは非常に少ない。」と語る。また、通常の取引所のように運営会社のウォレットに大量のビットコインが保管してあるわけではないため、ハッカーに狙われる心配は非常に少ない。

 

彼がこのプロジェクトに関わる理由について宍戸氏は「Bitsquareはビットコイン界でも非常に重要だと思うし、かなりスケールする可能性があるから」だと述べる。

 

プロジェクトに魅力を感じてバルセロナへ

 

そもそものきっかけは、9月にチェコのプラハで行われたHackers Congress Paralelni Polisに宍戸氏が参加していたことだ。そこでTrezorを製造するSatoshiLabsのアリーナ・ヴラノーバCEO、ビットコインセキュリティー専門家、伝道師アンドレアス・アンドロノポス氏、そしてBitsquareのマンフレッド・カレール氏に会った。そこでカレール氏がプロジェクトの協力者を必要としていたため、彼が住むバルセロナに移動し、Bitsquare主要メンバーの一人となった。

 

宍戸氏はBitsquareの魅力を「オープンソースで分散型アプリケーションなのに、わずかではあるが現在すでに取引手数料収入があることと、ネットワーク効果が期待できることだ」と語っている。

 

↑宍戸健氏(緑のT-シャツ)、マンフレッド・カレール氏(中心後ろ)、10月のバルセロナビットコインミートアップメンバーとのワンショット。

 

現在は分散型自律組織(DAO)の構築とアプリケーションが生む取引手数料収入を後ろ盾にBitsquareトークンの発行準備に取り組んでいる。最終的な形はまだ未定だがこのトークンが開発者に分配されことでエコシステム構築を目指しているということだ。この可能性に気づいた世界の優秀な開発者達から支援の声がかかり始めたそうだ。

 

ウォレット等のツールを開発する場合、開発元が収益を上げることができず、資金繰りに難航するケースも多い。その点、Bitsquareは取引手数料収入があり、取引所の役割を果たしながらも管理体がないプラットフォームを構築している。

 

また宍戸氏は「ここ数年多くのプロジェクトでICOが行われているが、ICOバブルが起きて開発まで辿りつかず終わってしまうケースも多い。その点Bitsquareはすでに稼働しており、収入もあるためトークンに価格がつくことは間違いない。そのトークンをこれから増えるであろう開発者にうまく配布できるような仕組みを作りたい。」と述べている。

 

 

今後の課題は?

現在クリアしなければならない課題については大きく3つある。まずは取引額の拡大、2つめは法務、3つめは問題が起きた際の仲裁の仕組みをどう分散化、運営するかだ。

 

日本国内にはしっかしとした体制で運営されている取引所が多くビットコインを購入する場合のBitsquareのニーズ少ないが、同サービスを使うメリットについて、「Bitsquareは数十種類以上のアルトコインも取引できます。まだ自動取引機能(API)は無く、取引高や使い勝手ではPoloniexなど大手には敵いませんが、購入後取引所にそのまま保管するよりは安心だと思います。」と述べている。

 

また、「ボーダーレスなプラットフォームなので、安心して購入できる取引所がない国々でも使えるように認知度を高めていきたい。」と今後の展望を語っている。

 

法務については、現在多くの先進国のビットコイン取引所では通常KYC (本人確認)が必要となるのだが、Bitsquareは分散型のソフトウェアなので本人確認する運営会社がない。これについては現在弁護士に相談中で、これらの問題をクリアする方法を探っている。(もっとも、分散型ソフトウェアなので当局も規制したりサービスを停止することは難しいのだが)場合によっては一部の地域ではこのサービスを使えないというメッセージが出たり、取引する相手に自分のIDを見せる選択肢なども検討されているようだ。

 

3つめの課題はビットコインの取引を行う当事者間で問題が起きた時に間に入る仲裁者(アービトレーター)をどう分散、運営するかだ。現在はカレール氏がこの役割を一人で担っているのだが、サービスが本格的に拡大すれば大勢の仲裁者が必要となる。このアービトレータが状況を公平に判断する能力があり、ユーザーが信頼できる人でなければいけないため、場合によりこの部分は信頼できる組織にアウトソースする可能性もあるという。

 

「前人未到な分野なので解決しなければならない課題は多いが、それでもBitsquareの可能性に気付いた開発者やエキスパートが世界中から集まってきている。」と宍戸氏は述べる。現在は数名のデベロッパーのみで開発を継続しているが、最新版のアプリケーションのダウンロード数は4,000~5,000、毎日のアクティブユーザーは数百人だ。これからさらにユーザーの獲得やサービスの充実を図っていくBitsquareの今後に期待したい。

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