ビットコイン入門

第2回:ビットコインはいつ生まれ、誰が育てたのか?

■謎の人物、ナカモトが生んだビットコイン

暗号技術に関心を持つ人々が集まるメーリングリストに投稿された一本の論文が世界を変えようとしている。論文のタイトルは『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』(ビットコイン:P2P 電子マネーシステム)。ビットコインの概念図とも言える論文だ。 論文の執筆者は「Satoshi Nakamoto」。ビットコインの開発者とされ、未だに正体が明らかにされていない。

論文で示された概念がプログラミングされて、実際にビットコインが動き始めたのは2009年 1月。利用できる店舗も取引所もない開発当初はごく一部の好事家たちだけが愛好するものだった。

2008年10月31日、暗号マニアたちのメーリングリストに投稿された一本の論文がビットコインを生み出した。

■少額決済が手軽にできる魅力にオタクが注目

ビットコインが最初に支払いに利用されたのは、2010年5月と言われている。あるアメリカ人が掲示板に「1万ビットコインをあげるから、誰か僕にピザを届けてくれ」と書き込んだのだ。1万ビットコインは2015年現在、およそ3億5000万円にあたる。

マウント・ゴックスが設立されたのも、この頃だ。設立者は2015年に逮捕されたマーク・カルプレスではなく、ジェド・マケーレブという人物。後に「リップル」や「ステラコイン」といったビットコインの亜種を開発した、暗号通貨界の大物だ。

当初のマウント・ゴックスはカードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング』のカードを交換するためのサイトだった。「Mt. Gox」の由来も「Magic The Gathering Online eXchange」だとされる。

カードの交換とビットコインは好相性だった。日本ほど銀行の送金ネットワークが発達していないアメリカでは、少額送金が迅速に、かつ安価に可能なビットコインが重宝されたのだ。とはいえ、この時期、ビットコインの価格は1ドルにも満たない水準だった。

■中国人の投機熱がビットコインに火をつけた

カードゲーム愛好家が注目する一方、もうひとつの勢力もビットコインの魅力に目をつけていた。表立った取引を好まない、裏社会で暗躍する人物たちだ。「違法薬物のamazon」とも呼ばれ2013年、FBIに摘発された闇サイト「シルクロード」が誕生したのは2011年。ここでは違法薬物売買などの決済手段にビットコインが多用された。

一方ではオタク、もう一方では闇サイト、2つの勢力がビットコインの利便性に目をつけたことからビットコインは徐々に注目を高めていく。

決定打となったのは中国人だろう。もとから投機好きな中国人がビットコイン価格の上昇に目をつけたのは当然のことでもあろうし、厳しい資本規制が敷かれた中国で手軽に資産を国外へ持ち出す手段として注目されたのも自然な成り行きだ。

暗号開発者が生み出し、カードゲームマニアと闇社会、それに投機好きな中国人に育てられたビットコイン。2013年には、1000ドル超えへと急騰していくことになる。

>>第3回:ビットコインの本質はブロックチェーン

著者について 高城泰:投資ライター。個人投資家への取材をライフワークとし、FX(外国為替証拠金取引)や株式投資などの分野で書籍の構成などを数多く行なう。近年では投資先のひとつとしてビットコインに着目。ビットコイントレーダーへの取材を進めている。著書にビットコインなど暗号通貨について解説した『ヤバイお金』(扶桑社)がある。

※この記事は2015年10月に公開されたものです。